2014年2月26日水曜日

笑顔を添えて


 「初めまして、どうぞよろしくお願い致します」
名刺を交換する際は、そんな気持ちも添えて手渡すものです。さり気ないワンクッションが場の雰囲気を和らげるのではと思います。どんなにステキな名刺でも、慌てながらおもむろにポケットから出し渡されては第一印象も台無しです。
 名刺を交換する際のマナーとして、目上の方より先に渡す。受け取る際に、ロゴや名前の上に手を置かない。ポケットやお財布から直接渡さない―があります。渡す名刺同様、名刺は相手のアイデンティティーなので、大切にしたいものです。
 そして、大切なものだからこそ、自分らしい名刺入れ選びができると良いのではないでしょうか。素材が上質でシンプルなもの、色や形が個性的なもの、遊び心あふれるものなど、シーンによって使い分けるのも大人のオシャレかも知れません。
 以前、バッグのデザイナーさんと名刺交換をした際、自らがデザインしたポーチから、かわいらしい名刺が出てきました(写真・キノコ型)オリジナリティーがあり、上質で、手渡すしぐさも美しく、その場の雰囲気を一気に和ませてくれました。当時は、さすがだな…と感激したものです。
 人との出会いの確率は、約70億分の1。本当に奇跡に近いもの…。だからこそ、お互いの「初めまして」を大切にしまいたいものですね。
名刺交換は「一番早い情報交換」だと思います。名刺本体ももちろんだけど、渡す仕草や表情で、その人の印象が決まると言っても良いくらい。 
大企業になればなるほど(会社にもよるけど)ロゴデザインや色、フォント使い等で、力の入れどころが伺える。。。センスも大体分かる。。
個人だと、それが余計に目について、大体どころか・・その一瞬の印象は、ほぼ確定に近い。そんな感じ。
(経費削減と言いながら・・)どっかから引っ張ってきたような模様が入ってたりすると、それだけでちょっと、いや、かなり警戒モードになったりもするもんです。笑
文中のデザイナーさんは、女性ながらマイケルジャクソンのようにキラキラしたオーラが眩しい方。名刺ケースもオリジナル。名刺ももちろんオリジナルだった。
その時、「あ〜・・この人って、本当にモノ創りが好きなんだな〜」と思ったものです。
渡す仕草もカッコ良かった★カッコつけてるのではなく、凄く自然。(それがまた良い!)
カッコ良くなくても、印象は大事。名刺も名刺ケースも、渡す仕草に笑顔を添えて、心からの「初めまして。宜しくお願いいたします。」を伝えられると良いですね〜^^


*ちなみに、中央にある名刺は私が今使ってるもの。下にチラッと写っているのは、春バージョンのショップカードです★

2014年2月19日水曜日

愛あるひと手間



 暖かみがある鮮やかな色合いに、ふわりと優しい肌触りで人気のある起毛した革。
スエード・ベロア・バックスキン・ヌバックと呼ばれるものがこれに当たりますが、その違いが意外に知られていないのも特徴のひとつかも知れません。見た目には分かりにくいのですが、スエードとベロアは、革の裏面(床面)を起毛させ独特の光沢感を引き立たせたもの。毛足が短く整っているものがスエード、粗く起毛しているものがベロアと呼ばれます。
 一方、革の表面(銀面)を使って起毛させたものが、バックスキンとヌバックです。バックスキンは革の裏面と思われがちですが、本来は鹿革の銀面を起毛したもの。ヌバックは、牛や羊革の銀面を起毛させたものです。ビロード状で美しく、どちらも希少な素材です。
これらの革は、水ぬれや汚れに弱く、日々のメンテナンスが大切。毛足に沿ってなでるようにブラッシングし、角についた汚れはこまめに取りましょう。専用のものでなくても、家庭用歯ブラシや消しゴムでも代用することが出来ます。使う前に専用の防水スプレーを使うと、水ぬれから守ってくれるだけでなく、汚れ防止にもなるのでお勧めです。使わない時には風通しの良いところを選ぶことも忘れずに。繊細だからこそ美しい素材、使う程に味わい深いものにするために、愛情を持って手にしてくださると幸いです。
昨今では、季節に関係なく、この手の素材を多く見かけます^^
発色もキレイなのでオシャレには欠かせない素材ですね〜
一方、メンテナンスについての意識が試される素材でもあります。
でもですね・・モノは考え用で、外出から戻ったら人間は手洗いうがいをするじゃないですか。あれと同じで、家に戻ったら手洗い(ブラッシング)うがい(中身を出して成型する)をしてあげるだけで、素材の持ちが、ぜんっ・・ぜん違うんです!
「え〜・・でも、面倒〜」なんて言ってちゃダメ!ダメ!文中にも書きましたが、愛情を持って使うことで、素材は必ず応えてくれます。
誰にだって・・朝起きて、顔を洗って、食事して・・と言うような、日常があるように、どんなモノにだって、そのモノ本来の日常がある。
何に対しても、愛あるひと手間をかけられる事こそが、本当に美しいのだと思います★



SOSAKUYA Miyazaki Guest House   Hiro.

2014年2月11日火曜日

革巻きペン



シンプルなペンも、革を巻くだけで握り心地も柔らかくなり、書きやすくなるものです。革を薄く漉(す)いたりといった難しい作業はしなくても、直線縫いで簡単にできる「革巻きペン」の作り方をご紹介します。
 ①シンプルなペンを用意。
 ②キャップの出っ張った部分を折り取り、紙を当て、キャップと本体の型紙を作ります。(縫いしろは3ミリ程が縫いやすい)型に沿って革をカットします。市販のカッターを使い、定規をしっかり押し当てて切り取る(曲がらないように注意)。縫う部分に目打ち(針を通す部分に穴を開ける作業)をする。これも定規を押し当てながら3㍉等間隔で開けていきます。
 ③2本の針に1本の糸を通し(2本取り)ミシン縫いの要領で交互に縫い進めていきます。縫い始めと縫い終わりは返し縫いをしてください。縫い終わりは糸を短くカットし縫い合わせに糸を挟んで接着剤で固定します。
 仕上げに、縫い目を固定するため金づち等で軽く打ち付け、断面(コバ面)をサンドペーパーで整えると、見た目もキレイに出来上がります。
 どこにでもあるボールペンも、工夫次第で特別な1本になります。革やステッチを変えてみたり、ペン自体を変え、デザインを工夫するのも楽しいかも知れません。大切な人への贈り物にいかがでしょうか。
完成図↓




手前にあるのが、どこにでもあるボールペン。これが結構書きやすい^^
キャップの部分だけを接着し、本体はキツメに型を取って縫ってしまえば、何回でも差し替え可能です。ただのボールペンが・・・一気にオシャレに大変身♪
「えーーー!これだけの説明じゃ分からない!」と言う方は、気軽にお問い合わせ下さい。(文字数が決まっているため、説明は最低限に抑えてあるのです・・汗)
そして・・
撮影用に作った、画像手前の赤い革巻きペンを希望者にプレゼント★
来店時に「ブログ見てきました!」と言って頂ければ分かりますので、お気軽に〜♪
ただし!二本のみ(もう1本は色違い)となりますので、早い者勝ちですよ。笑

2014年2月6日木曜日

心を込めて。


 今のお店を始める前、ダンボールいっぱいの商品を持って、老人ホームや施設の昼休みの時間に外販をしていた時期がありました。出会った皆さんは前向きで、いつも夢を描いていました。
「小さなカフェを開きたい」「骨董のギャラリーを」「教え子が立派に成人する姿を見たい」―。夢はどれもステキで、お話を聞くのを楽しみに通ったものです。駆け出しの私に優しい言葉をたくさん掛けて下さり、どれだけ支えになったことか。今でも当時の記憶は宝物です。

 何かを始めようとする時は、さまざまな試練が目の前に立ちはだかり、山のような難題に心が折れそうになり、先の見えない不安に駆られるもの。そんな時、いつも頭の中で、夢を語ってくれた方たちの言葉を自分なりにつづり繰り返します。
「夢を大事に思うなら、自由を心から願うなら、焦らずに築くことが大切。そうして静かに歩んでいれば、遠い道も歩いて行ける。心を込めて接すれば、それは 必ず自分に返る。小さなことにも全て力を尽くし、喜びを飾り立てない。小石を積み続けるように、焦らず、ゆっくりと…。それで日ごとに自分が育つ」―。

 季節を分けるこの時期は、環境が大きく変わる前の静かな揺らぎの時。志をしっかりと持ち「少しずつ」焦らずにゆっくりと進めることができればと思います。





夢を大事に思うのなら、焦らずに築くことが大切。
そうして静かに歩んでいけば、遠い道も歩いていける。
心を込めて接すれば、それは必ず自分にかえる。
自由を心から願うのなら、焦らずに進み続けることが大切。
小さなことにも全て力を尽くして、喜びを飾り立てないこと。
日毎に小石を積み続けるように、焦らずに、ゆっくりと、築くことが大切。
それで日毎に自分が育つ。





仕事をする上で、いつも心に留めている言葉です。(いつもブログを見て下さってる方は、何度となく目にした言葉かもしれませんが・・。 )
大切なのは、夢を忘れずにいることで、目の前にある小石(経験)の積み重ね。思い描いていることは「いつか叶う」と信じきる事と、自分への根拠のない自信と愛情こそが、生きていく上では最大の強みになる。って。^^
日々の生活でも、仕事でもなんでも・・最初の一歩を踏み出さなければ、近づくことなんてあり得ないのだから。
そう・・。心を込めて接すれば、必ず見えてくるものがあるはずなんです★
急ぐときこそ、一息入れて、珈琲でも飲みながら、自分を眺めてみるのも良いかもです♪
 





SOSAKUYA Miyazaki  Guest House   Hiro.

2014年1月28日火曜日

ありがとうの温度



誰でも一度は手をつないだ経験があるのではないでしょうか。よちよち歩きの時、お母さんに手を引かれて。初めて通う学校で、お友達や先生と。友達とケンカした後、仲直りの印に握手を―。そんなさまざまな思い出に共通するのは、人と人とのぬくもりだと思います。革の善しあしは、「五感」で感じ取るもの。これに尽きます。パソコンなどの画面で完全に理解するのは不可能ですし、いくら巧みな言葉を添えても伝え切れないものです。更に、画像にはない革独特の「香り」と「手触り」は、自分で体感してみないと分かりません。その"モノ"の良さというのは、実際に使って初めて気付くことも多いのです。革製品を選ぶ際も、実際に手に持ち、その"モノ"と対話することで生まれる自分の感性と、デザイナーの感性を信じて、色んな"モノ"に「挑戦=冒険」してほしいと思います。

 革は生き物。手にした瞬間から、つやを増すその時まで、手にした人により変わり続けます。美しく変わり続けるには、初めて手をつないだ時のドキドキワクワクした気持ちを持ち続けることも大切なのです。
生まれたばかりのバッグや小物と手をつなぐ。そんな風に、つないだ手のぬくもりが覚えている「ありがとう」の温度を、お店に来てくださる方々へ、少しでも伝えられたら良いなと思います。




「握った手の温もりが覚えている ありがとうの温度」

ずっと前に書いた詩です。
過去記事→「忘れない」
幼い頃に、見たり聞いたりしたもの、味わったり、ほのかな香りとして記憶しているもの・・それらはきっと、言葉にすると一言なのではないかと思います。「ありがとう」の一言。言葉の違いや感覚は、住んでる場所で様々だと思うけれど、言葉にならない思いを伝えられるからこその、人と人との関わりで、同じ時間を過ごした時の空気や、触れあったときの温度感なのではないかな?と。


考え方は人それぞれ違うと思いますが・・私は、そう思います。
祖母から母、母から私、私から娘へ。形ではない宝物を繋げていけると良いな。^^




今回の画像は、新婚数ヶ月の愛らしいご夫婦♡
使ったのは内容に合わせて手元だけだったけど・・正面は、こちら↓♪



私の「手をつないだ写真撮らせて頂いて良いですか?」という突然のお願いに嫌な顔ひとつせず、快く了承して下さいました。お二人とも笑顔が素敵だし、なによりとってもお似合いです♪いつまでもお幸せに〜
ご協力、本当にありがとうございました★
(*いや〜・・でも、あのおばあちゃんにナンパされるとは思わなかったですね!笑)


彼と彼女が繋いでいる手も、ご両親や兄弟、友達、身近な人達により、優しい温度を知っているはず。
そんなありがとうの温度を、色んな人に伝えていって欲しいな・・と思います。




SOSAKUYA Miyazaki Guest House  Hiro.

2014年1月21日火曜日

自分らしい美しさ



目標に向かって自分を信じ、黙々と努力を重ね続けることは本当に素晴らしいことですが、そこに到達するためには、想像を絶する苦悩の連続やいくつもの葛藤を繰り返していくものだと思います。
 鞣(なめ)された革を1つのものにするため、重なる部分の革を薄くすることを「漉(す)く」と言います。重ねて縫製した時に、その部分の断面に凹凸があったり、ズレが生じていては、見た目も美しくありませんし、使い込んだ時の手触りも良くありません。均等に薄く漉く作業は熟練の技が必要。老練の職人でさえ神経をとがらせ細心の注意を払いながら行います
また、革を裁断した断面のことを「コバ」と呼びます。縫製した縁部分の仕上げひとつで、出来上がりも違ってきます。素材の魅力を最大限にいかし、デザイナーがおこした形をより美しく再現するため、コバ面を滑らかにし、全体のラインを引き締めます。1つのものを作るには、どの工程も手を抜けないのです。

 飾り立てたものよりも、内面からあふれでるような「美しさ」があるものは、派手さこそないけれど、本当に愛すべきもので、時を経るごとに自分自身の手になじんでいく素直さがあります。一目では分かりにくいですが、それは「自分らしさ」を創り出す始まりなのかもしれません。




バッグを1つの絵画に例えると、コバ面は、絵画を引き立てる額縁のようなものです。
画像を見て分かる通り、「良いモノ」は、細工が見えないように細工してある。^^
良いものだ!と誇張し過ぎない。控えめで、自然な美しさがあります。

時々、自分でも小物を作ったりするのだけど、個人的に一番手間がかかるのと思うのが「漉く」作業。均等な厚みに仕上げるには、指先はもちろん、足先にまで神経を使うのです。
あなたの持っているバッグだって、ひとつひとつのパーツを組み合わせ&縫い合わせ、様々な行程を経て出来上がっています。もし「これは良いものだった(高かった!)」と言うバッグや小物があれば、細部をじーっと見てみるのも良いかもしれません。本体とハンドルを繋ぐ部分が滑らかなラインで整っているか、コバ面に塗られたコバ剤が均等にのっているか、等。そうして、眺めながら磨いてあげる事で、愛着も増すと思います。
革は生き物です。愛犬を毎日お散歩に連れて行くのと同じように、毎日の言葉かけ(使う事)で素材は必ず応えてくれます。


*この記事は、頑張る受験生を応援したくて書きました。
「自分に負けないで!やれるだけの事を精一杯出し尽くせ!未来は君にかかってる!頑張れー!」




画像左のトートバッグは、革にスクリーン転写し、布みたいな柔らかな模様を描いたもの。横にあるのは、名刺ケース。どちらも細部まで丁寧な仕上げが施されています。

2014年1月15日水曜日

生き方の加工法


「ガンバレ!ガンバレ!負けるな!負けるな!」
 亡くなった祖母は、落ち込んだ私に理由を聞くこともせず、手を大きく振りながらいつも応援してくれました。私が社会人になってからも、祖母が寝たきりになってからも、ずっと。変わらずそう言い続けてくれたことは、年を重ねるごとに胸の奥深く刻まれていくように思います。
 数ある革製品の中でも、「ヌメ革」と呼ばれるものは、植物性のタンニンで時間をかけなめされ、表面加工をほとんど施さずに仕上げたもの。革独特の素朴な匂いと人肌にも似た自然な手触りが心地良いものです。ナチュラルな分、デリケートなうえ傷つきやすく、使い方次第では痛むことも…。傷がついたまま放置すると、その傷は消えることなく残るのですが、人の手で触れ使うことで、傷は目立たなくなり、素材全体には、使い始めからは想像もできない、美しい色つやを増すのです。深みを帯びた素材には、小さな傷さえ美しく写るもの。傷つくことを恐れず、使うことで深みを増す―。人も革製品もそれが何よりの「加工法」なのかもしれません。
 新しく大人の仲間入りをする新成人は、革に例えるとナチュラルなヌメ革。大きな夢をいっぱい描きながら、良い艶(つや)を増していってほしいと願っています。



子供の頃、時々遊びにきてくれていた祖母は、私が「また来て!」とせがむと、その度に「また遊びにきたいけど、次に会うのは多分ばあちゃんの葬式やね。」等と言って、私たち兄弟ををビビらせては笑っていました。そして更に・・「ほら!Hiroちゃん、ばあちゃんの足は半分棺桶に入ってるやろ?」と言い、元気いっぱい片足を踏ん張って見せてくれました。笑

自分の事を構わず、周りの人にありったけの愛情を注ぎ続けて、みんなから愛されてた。
本を読むのが大好きで、好奇心旺盛で、誰かの為に生きるのを生き甲斐としていたばあちゃんは、私にとって人生の師です。どんな事があっても「きつい」とか「つらい」等という言葉は口にせず、人の事ばかり心配してた。
亡くなる少し前に、初めて「痛い」と口走った時には、みんなが驚いたものです。




上の記事のように、なんでもバッグや革に例えてしまうのは・・職業病です。笑

けれど、自分が携わっているモノの中に生き方を見出せる事は、生きていく上で「大きな力=生き甲斐」になると思います。
見過ごしてしまいそうな道路脇の小さな草花、誰の目にも触れないようなゴミに近い欠片など、どんなものでもそこに在るのは必ず意味があって、そう成るべくして形になったのだと思うんです。一枚の落ち葉に「美」を感じ、捨てられたモノに捨てた人の未来が写るように、モノに命を吹き込めるのは、人だけなのだから。


1つの区切りを自分の中で決めるのであれば、月日の長さよりも、心に響いた言葉や、人と人との繋がり。小さな事の積み重ね。そしてなにより、その時間分の重さだと思います。成人式を何回迎えても・・自立出来ずに依存し続けている人もいるし、未成年でもドキッとするくらい自立した人もいる。色々ですね。
そして、どんな日でも、一日を終えると言う事は、自分の人生を一日分消化したと言う事。少しでも良い一日を送れるように、人生の背景となる人たちへの感謝の気持ちと、関われると言う喜びを、いつも心に留めていたいですね。

読んで下さってありがとうございます。



SOSAKUYA Miyazaki Guest House   Hiro.