2014年1月21日火曜日

自分らしい美しさ



目標に向かって自分を信じ、黙々と努力を重ね続けることは本当に素晴らしいことですが、そこに到達するためには、想像を絶する苦悩の連続やいくつもの葛藤を繰り返していくものだと思います。
 鞣(なめ)された革を1つのものにするため、重なる部分の革を薄くすることを「漉(す)く」と言います。重ねて縫製した時に、その部分の断面に凹凸があったり、ズレが生じていては、見た目も美しくありませんし、使い込んだ時の手触りも良くありません。均等に薄く漉く作業は熟練の技が必要。老練の職人でさえ神経をとがらせ細心の注意を払いながら行います
また、革を裁断した断面のことを「コバ」と呼びます。縫製した縁部分の仕上げひとつで、出来上がりも違ってきます。素材の魅力を最大限にいかし、デザイナーがおこした形をより美しく再現するため、コバ面を滑らかにし、全体のラインを引き締めます。1つのものを作るには、どの工程も手を抜けないのです。

 飾り立てたものよりも、内面からあふれでるような「美しさ」があるものは、派手さこそないけれど、本当に愛すべきもので、時を経るごとに自分自身の手になじんでいく素直さがあります。一目では分かりにくいですが、それは「自分らしさ」を創り出す始まりなのかもしれません。




バッグを1つの絵画に例えると、コバ面は、絵画を引き立てる額縁のようなものです。
画像を見て分かる通り、「良いモノ」は、細工が見えないように細工してある。^^
良いものだ!と誇張し過ぎない。控えめで、自然な美しさがあります。

時々、自分でも小物を作ったりするのだけど、個人的に一番手間がかかるのと思うのが「漉く」作業。均等な厚みに仕上げるには、指先はもちろん、足先にまで神経を使うのです。
あなたの持っているバッグだって、ひとつひとつのパーツを組み合わせ&縫い合わせ、様々な行程を経て出来上がっています。もし「これは良いものだった(高かった!)」と言うバッグや小物があれば、細部をじーっと見てみるのも良いかもしれません。本体とハンドルを繋ぐ部分が滑らかなラインで整っているか、コバ面に塗られたコバ剤が均等にのっているか、等。そうして、眺めながら磨いてあげる事で、愛着も増すと思います。
革は生き物です。愛犬を毎日お散歩に連れて行くのと同じように、毎日の言葉かけ(使う事)で素材は必ず応えてくれます。


*この記事は、頑張る受験生を応援したくて書きました。
「自分に負けないで!やれるだけの事を精一杯出し尽くせ!未来は君にかかってる!頑張れー!」




画像左のトートバッグは、革にスクリーン転写し、布みたいな柔らかな模様を描いたもの。横にあるのは、名刺ケース。どちらも細部まで丁寧な仕上げが施されています。